と、かつてネパールのガイドブックには書かれていたものである。
要は「女性はあまり肌を露出するのはネパールの慣習上よろしくない」ということなのだが、カトマンズを見る限りでは「今日ってそんなに暑かったっけ?」と首をかしげたくなるくらい、若いお嬢様方の肩やら足やらは外気にさらされている。
メディアの普及による海外の情報と、安い中国製品の流入によって、ネパールの若い女性の服装は恐ろしい速度で変わってきた。
私が10年前に来たときは、女性はクルタスルワール呼ばれる長いトップスとパンツのスーツかサリー、つまりいわゆるところの「民族衣装」で洋服を着ている女性は本当に少なかった。たとえ洋服を着ていたとしても、体の線が出にくい緩め、長めのトップスにパンツスタイルで、前述のクルタスルワールをアラカルトで着ているようなものだった。人々はいまよりずっとコンサバだったし、何より街に売られている「洋服」は少なく、高く、デザインは日本人である私から見ると酷いものだった。
今も私から見れば「ださくて安っぽい服」が大多数には違いないのだが、それでも外国の流行に近い形の服が店頭に並び、その額もさほど高くないようである。そもそも上下の組み合わせが自由にできるのだから、3点(トップス、パンツ、ショール)セットでないとおかしいクルタよりも、「毎日違う恰好をしたい」若い女性にはそりゃ洋服の方がいいに決まっているのだ。
しかし、週末ともなると私のオフィスから家までのの帰宅ルートは「ここは歌舞伎町?」状態なのが2010年現在の実情だ。つまり、ケバくて、露出が多くて、個人的な感想を言わせてもらえば男子女子ともに振舞いが下品なのである。
別に彼らは成金のオヤジとお小遣いをもらっているねえちゃんではない。ただの金持ちのくそガキどもである。親も親なのだろうし、他人のことなのでとやかく言う気もないのだが、ここはツーリストエリアなのでやはりふとひっかかる。
ネパールを訪れるツーリストの多くはトレッキングなどのアウトドア目的か、短期のボランティア活動のためである。
自然が多く残っていて、人々は貧しくとも素朴な田舎者で・・・、という途上国幻想をいだいて来ている人が多いだろう。ガイドブックを広げてみると、「現地の慣習上、露出の多い服装は控えるように」と書いてあるかもしれない。
それなのに、夜食事をしようとゲストハウスを出てみると、ベアトップのドレスを着た女の子が彼氏のバイクの後ろにもたれながら、携帯(さすがにスマホではないが)で何の悩みもなさそうに笑っている。
ボランティアのアレンジ(有料)をしてくれたNGOの若いスタッフが「いいクラブがあるよ」と誘ってくれる。外国人の多いクラブで、おそらくネパール人の平均給与から見れば決して安くないクラブだろう。髪を茶色のグラデーションにして腰パンの彼はこのクラブに友人がたくさんいるようである。
カトマンズ市半径6kmはもはやガイドブックに載っているネパールではないようである。と、土曜の夕方である今ふと思った。
でも、このエリアを離れればネパールは未だにコンサバで、地味で人々は苦労をしている田舎の国である。決して村へ行って肩を出してはいけません。